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弦楽四重奏聴き比べ <ベートーヴェン:「大フーガ」> その⑨ [ベートーヴェン:弦楽四重奏曲]



23. ゲヴァントハウス四重奏団 (NCA) 1997
16'04''

 少なからず驚かされたのは、その⑧で採り上げたハリウッド四重奏団と全く同じタイムであることである。それだけでこの団体が只者ではないことがわかろうというもの。前回私は書いたように、「速からず、遅からず」というテンポが16分なのである。この絶妙のテンポを若きエルベンが実践できているところにまず驚かされる。

 現ゲヴァントハウス四重奏団は1993年以来のメンバーであり、フランク=ミヒャエル・エルベン、コンラート・ズスケ、フォルカー・メッツ、ユルンヤーコプ・ティムという布陣であり、1995年にはベートーヴェン全曲チクルスを行なった。演奏してみて彼らが学んだことは聴き手に音楽の緊張を与えるのではなく、音楽の豊かさを感じさせたいということだったという。かくして、伝統から学んだ正当性と自発的に学び取った現代性を加味した模範的演奏が完成した。

 この「大フーガ」ではまったく雑音をたてず、三連音符を打ち込むテクニックに脱帽である。カヴァティーナもそうだが、彼らの響きはドイツの団体にしては柔らかく、それでいて透明であり、和音の溶け合いの見事さが光る。フーガのひとつひとつがけして荒びることなく、格調と気品すら漂わせつつ美しく響いていく。それも構築美を輝かせながら!緩やかな部分の美音の氾濫はいかばかりであろう。何とベートーヴェンは美しい音楽を書いたのだったか!14番や16番では若干外面的な美しさのみが際立ったような印象を受けたのだが、この「大フーガ」では音楽と演奏とが完全に調和している。クライマックスの神々しさも絶品であり、これと同じ体験をしたのはヴェーグ四重奏団の再録音盤以外に存在しない。ヴェーグ四重奏団と違うのはエルベンの繊細かつ芯のある抜けきった美音である。最新録音でこんな美しい演奏があるとなると、ズスケもターリヒも分が悪い。

 これは超名演奏である。 現代の全集としては真っ先におすすめしたい。

 なお、以前出回っていたセットは、ボックス取り出し口に三角の切れ込みがあり、箱の裏の社名の欄に2003という表記があった。これはひどい代物で14番の終楽章に大きなノイズが混入していた。最近出回っている新プレスでは改善されている。どうやら初期盤の不良だったのだろう。ただし、初期盤の音質が耳に優しい柔らかな響きだったのに対して、現行盤はヘッドフォンなどで聴くと聴き疲れがする。音が引き締まり、高音がきつく、どこかの帯域がカットされたような・・・。

 以前出ていた音であれば(そしてノイズがなければ)、本当に文句なしのセットなんだけどなあ。


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コメント 3

dokuoh

こんばんは。

立て続けにコメント失礼いたします。
私の中の大フーガの最高の名演と言えば、この演奏です。全くおっしゃるとおりで付け加えることがありません。本当に素晴らしい演奏です。グロテスクさよりも格調の高さ、美しさが際立つ類稀な名演だと思います。

私の持っているのは再発盤ですが、録音に対しては非常に不満が残っています。初期盤の音が良かったということで、非常に残念に思っています。ノイズの除いたオリジナルに近い形で再発売したら、やっぱり買っちゃうんだろうなぁ(笑)。
by dokuoh (2007-12-08 00:45) 

KITAKEN

dokuoh様

dokuoh様のベストもこの演奏でしたか。今のところ、23種類をじっくりと聴いてきましたが、ヴェーグ四重奏団のステレオとこのゲヴァントハウス四重奏団が特に印象に残りました。

ゲヴァントハウス四重奏団のCDはバラでも売っているので、そちらなら初期盤の音かもしれませんね・・・。初期盤はふわっとした残響の美しい音だったので、何でこんなに違いが出るのか残念でなりません。でも、14番に異音がありますし・・・。NCAには苦情も何度か言ったのですが、まったく無視でした。

演奏が美しいだけに、本当に勿体無い話です。
by KITAKEN (2007-12-08 01:22) 

Noise

失礼します。
小生も「取り出し口に三角の切れ込みがあり、箱の裏の社名の欄に2003という表記がある」同上の写真と同じCDBOXを持っており、再度、ご指摘の14番の最終楽章(CD8のトラック6、フィナーレアレグロ)を聞きましたが分かりません。安物のコンポで聞いているためでしょうか?どの辺りにノイズがあるのか、具体的にご教示頂けませんでしょうか?
ご教示頂ければ幸いです。
by Noise (2017-01-24 21:18) 

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