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ジュリアード四重奏団のアスコーナ・ライヴ [弦楽四重奏団]

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 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の名盤、私の結論はジュリアード四重奏団である。

 すでに比較試聴のページでも書いたように、彼らの演奏を聴いていると本当に泣けてくる。あの崇高な美しさを持つ第三楽章の魅力に敵わないのである。

 (もっともまだ聴けていない幻のシュトロス四重奏団 (Aarlton LC6786) を聴けば、また評価も変わる可能性があるが・・・。) 

 ジュリアード四重奏団はかわいそうな団体である。彼らのスタジオ録音には彼らの解釈の全てが封じ込められたとはいえないもどかしさがある。

 それを裏付けるような話として、幸松肇氏によれば、録音ディレクターの主義・主張によって常にがんじがらめになり、自分達の自由な解釈はスタジオ録音では残せなかったのだという話がある。

 私がベストと言うのは、そのスタジオ録音による最初のベートーヴェン全集の一枚であるから、彼らとしては不本意な(?)演奏なのかもしれない。

 ジュリアード四重奏団が真にその自由で生き生きとした演奏を奏でるのはライヴであろう。

 彼らの傑作の一つとして、写真にあげたアスコーナのライヴ録音があげられよう。ベルクの抒情組曲がメインで、その前にベートーヴェンの最後の四重奏曲が収録されている。中古店では一枚千円程度で値がついている。「買い」のアイテムでしょう。

 このライヴ録音は凄い。1970年の真夏の録音だが、何と言うか、熱気が違うのである。空気感すら感じ取れる。その熱気に浮かされたように、16番一楽章冒頭の妙なる調べが聴こえてくる。音質は多少荒いところがあるが、大きく脈打ち、流れ、うなるような力強いアンサンブルが楽しめる。

 16番で難しい箇所に、第二楽章ヴィヴァーチェの50小節も続くオスティナートがある。これを名手クラウス・アダムの名演奏によって改めて聴く。スタジオ録音以上に凄い。舌を巻くとはこのことだろう。それに、この演奏を通して聴くと、このヴィヴァーチェは単なる諧謔にはけして聴こえない。何か怖ろしげな、狂気のようなものを感じさせてぞっとしてしまうのだ。

 ここには、晩年に至っても、最後まで闘っていた闘志の人ベートーヴェンの姿がある。ユーモアではなく、狂気に近いエナジーと激情を感じ取る。このような二楽章の解釈を私は他の団体からは聴いたことがない。

 もっとも感動的なのはやはり第三楽章。スタジオ録音は墨絵のような音色とハーモニーによって、胸に染み入ってくるような味があり、旋律の奏し方一つをとっても涙腺がやられるのだが、このライヴ録音はもっと雄弁で、ヴィヴラートをたっぷりと利かせた泣き節である。スタジオ録音にはより落ち着いた佇まいがあるのに対して、ライヴにはライヴの熱っぽさと濃厚なドラマがある。

 スタジオ録音でも、このように自由闊達にやってくれれば(そして途中でメンバーの交代もなければ!)、私たちはより巨きな遺産を手にしていたに違いない。このライヴを聴くたび、何か果たせなかった思いのようなものを感じて、沈鬱な気持ちが残る。


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