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ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第13番 ト長調 作品106 [ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲]

 ドヴォルザークといえば、「新世界」。弦楽四重奏といえば、「アメリカ」。名盤案内の類をめくってみると、ほとんどの項がこの二曲に集中し、あとは申し訳程度にチェロ協奏曲が掲載されているか否か。

 私は天邪鬼なので、「アメリカ」よりも先に13番を聴いた。

 一度聴いただけで自分の不明を恥じた。何という素晴らしい音楽だろう!どの楽章、楽想をとっても親しみのある美しい旋律が散りばめられている。驚いたのはそのめまぐるしいほどに激変するテンポとリズム!この曲の多彩なハーモニーと複雑なリズムを完全に体現することは、ベートーヴェンの後期四重奏曲を演奏するよりもひょっとして難しいのではあるまいか。そんな思いを抱かせるほどに、この曲は難曲だ。

 ほとんど一小節ごとに表情が変化していく、という意味では、まるでモーツァルトを思わせる。ドヴォルザークの良いところは、そこにどこか人の良さというか、純粋無垢な精神を覗かせるところである。

 一楽章はめまぐるしくテンポが激変し、ドヴォルザーク特有の民謡調のメロディーとリズムが土俗的な荒々しさでもって見事なテンションを貫く。緩徐楽章の苦みと諦観、突如溢れ出す哀しいくらい懐かしい感情。スケルツォのどこか諦めを思わせる悲愁の旋律、終楽章の天真爛漫な明るさの中に隠された寂寥。ドヴォルザークの傑作の一つであるばかりか、弦楽四重奏曲の中でも屈指の名作だと私は思う。

 チェコの弦楽四重奏を聴くなら、スメタナを選べば良いのだろうが、ここはヴラフ四重奏団で聴く。

 ヴラフ四重奏団は私が今もっとも注目している四重奏団のひとつである。2004年、国内でもベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集のうちの数点がリリースされ、作品131を聴いたが、残念ながら凡庸な演奏だった。ヴラフ四重奏団らしい楽曲に対する鋭い斬り込み方が中途半端で、如何にヴラフといえど楽聖の前では一歩引いてしまった感がある。

 というのも、このドヴォルザークを聴いたからわかったことだ。何の期待もせずにプレイヤーにセットした。冒頭の一音を聴いただけでくらくらっとしてしまった。鋭い切れ味、流麗に疾駆する旋律線、迸る美音!その美音も潤沢でこの上なく純粋、キラキラとまぶしい。ヴラフ四重奏団は、掌中の楽曲にぐいぐい斬り込んでいき、目がくらむようなリズム処理によって、極めて鮮烈な演奏を展開している。

 この活き活きとした呼吸と美妙なる音色は彼らのベートーヴェンには聴かれない。もっとも、国内盤(しかも廉価盤)ゆえの問題であるかもしれず、輸入盤であればもっと目の覚めるような音かもしれない)。写真のディスクは私の持っている輸入盤で、奥行きがあって、潤沢なサウンドを満喫できる。

 ドヴォルザークはこんなに凄い曲を遺していたんだ!という驚きとともに、ドヴォルザークに対する思いすら変えた演奏である。


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