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スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「我が生涯より」を聴いて [スメタナ:弦楽四重奏曲]

 弦楽四重奏曲の演奏ついて、自分の要求するものがどんどん高くなっている気がする。

 それはいちゃもんでも、難癖をつけているわけでもなく、様々な演奏を聴くことで出来上がった自分の理想の演奏像に照らした評価によるためだ。

 人生で大切なものの中には、「時間」と「お金」が必ず含まれることだろう。大切な「お金」を犠牲にして、私たちはコンサートに行き、ディスクを買い求め、そして大切な「時間」を使って、演奏家と向かい合うのである。

 演奏家に対して評価をすることは、クラシックを趣味にする者にとって真摯な芸術の楽しみであり、人生を賭けた営みとすら言えるのかもしれない。

 いくつか新しいCDを入手したり、改めて手持ちのものを聴き直すことによって、「これはだめだ」と放り投げてしまったものもある。以前感心しきりだった演奏が、さらなる名演奏を聴くことによって、アッという間に色褪せ、そこに中身がないことを発見し、憤ることもあった。これだから、聴き比べはやめられない。

 今回はスメタナについて書くことにしたい。

hollywoodstringquartetkodaly.jpg

 写真のディスクはハリウッド四重奏団による名演奏を集めた一枚であり、コダーイ、スメタナ、ドヴォルジャークなどが収録されている。この中のスメタナがことさら感動的な名演奏である。

 スメタナの弦楽四重奏曲第1番「我が生涯より」。個人的にはヤナーチェクやコダーイの弦楽四重奏曲よりも好きだ。

 名曲中の名曲だけにCDは無数にあるが、その中でも一際輝く星は、このハリウッド四重奏団の演奏だろう。

 ハリウッド四重奏団についてはこれまでも何度か書いてきたので、詳細はそちらをご覧頂くとして、どうもこの団体は民俗的な作風を持つ作曲家の演奏にことのほか自信を持っているように思われる。このスメタナの四重奏曲を通して、彼らは類稀な演奏技術、深い探究心、そして芸術性とを見事に結晶にしているのだ。

 一楽章の冒頭の力強い一撃によって、この曲の全貌がわかろう。この一音を聴いただけで呪縛されてしまう。ヴィオラ・ソロの激しい訴えが、この名曲をことさら感動的なものたらしめている。聴く者の体を斬りつけるような熾烈で強靭なアンサンブル!そして哀愁に満ちた嘆きの歌が交差し、音楽は静けさの中に沈んでいく。

 二楽章は舞踊曲である。メロディーはどこかユーモアのある民俗的な美しさに満ちたものである。その陽気な香りが懐かしいが、ハリウッド四重奏団の演奏は曲想の描き分けはべらぼうに上手く、曲への真摯な切り込み方は、狂気すら漂わせ、その熱に駆られたような激しさに圧倒されっぱなしである。終結の気合の入れ方も尋常でなく物凄い。

 三楽章のラルゴ・ソステヌートは一転して、心に染み入ってくる深い詠嘆である。ソロの思念的で深沈とした音色はどうだろう。全編に渡って、墨絵のようなデリカシーあるモノローグが常に漂う。曲が盛り上がるにつれて、熱気と狂気の中から、粘りつくような慟哭が聴こえてくる。そしてうっとりと昔を懐かしむような哀愁に満ちた旋律が綿々と綴られるのである。ハリウッド四重奏団の表現は最高に雄弁である。

 終楽章の細かいリズムの刻み方と懐かしい旋律の奏で方は愛らしい陽気さを湛えて楽しく、ピッチカートがメルヘンチックな音彩を撒き散らす。ハリウッド四重奏団は曲が盛り上がるにつれて、激しく複雑になっていく楽想を巧みに音化していく。そして、スメタナの聴力を奪った耳鳴りの音の衝撃!その後の慟哭の苦しさ。そして、やっと訪れた心の平安にジーンとしてしまった。

 ああ、思えば、スメタナは左右の耳の聴力を失い(梅毒)、60歳で精神病院で発狂し、この世を去ったのだった。この曲はスメタナの生涯を綴った心の伝記なのだろう。容赦なく音楽に切り込んでいくハリウッド四重奏団の演奏は、作曲家が痛ましくなるほどに深い訴えを持っている。

 音質も良好である。


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